リビング京都 東南版 5月30日号
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50代からの毎日をもっと楽しく、もっとステキに過ごすための特別編集の4ページ大人タノシVOL.12人生を楽しむオトナたちへSpecialinterviewスペシャルインタビュースペシャルインタビュー渡辺えりさん俳優還暦に南座で初主演とは感慨深いものがありますね8年前、美輪明宏さんのアドバイスにより、それまでの「渡辺えり子」から改名した、渡辺えりさん。それが新たなパワーとなってか、還暦を迎えたこの夏は、南座で「喜劇 有頂天旅館」の主役にチャレンジ、ますますの活躍が期待されます。女優のほかに、劇作家、演出家、エッセイストと多彩な顔を持つ渡辺さんですが、実は京都に意外な縁があるようです。「子供のころ、レコードで覚えた歌を、みんなの前で披露すると、これが好評でね。それで調子に乗っちゃったところがあるんですけど(笑)。それから『赤い靴』というバレリーナが主演の映画を見て、今度はバレリーナに憧れまして。また、宮沢賢治や高村光太郎が好きだった父親の影響で、詩の朗読が好きになったり…」幼いころから、すでに芸事に強い関心を抱いていた渡辺さんの、演劇への道を決定的にしたのは、16歳のときのある出来事。「地元の山形市で『ガラスの動物園』というお芝居を見て、客席から立ち上がれないほどの衝撃を受けました。それで、終演後、演出をしていらした女優の長岡輝子さんの楽屋を、無謀にもアポなしで訪ねたんです。『芝居の道に進みたいけれど、大学(できれば京都大学)にも入りたい。どうしたらいいでしょう』って聞きに。すると長岡さんは『役者に学歴はいりません。すぐに上京してお芝居の勉強をなさい』って言ってくださったんです」演劇界の大御所といわれる長岡さんの、このアドバイスが後押しとなって、高校卒業後、両親の心配を振り切って上京。舞台芸術学院で学び、やがて「劇団渡辺さんの父方の祖父が、かつては京都のお寺の住職で、映画の成功祈願のおはらいなどにも尽力したとか。その京都で、この夏、南座に初出演で主演。演目は、琵琶湖のほとりの古い料理旅館で繰り広げられる大騒動に、人間の業をほろ苦く織り込んだ、北條秀司の名作をもとにした「喜劇 有頂天旅館」。「よく足を運んだ南座ですが、出演するのは初めて。私が演じるおかみの役は、もと大津芸者で古風な美人(笑)、働く女性の原点ともいえる役柄。共演のキムラ緑子さんとは、体当たりの死闘を演じることなりそうです。実は、初演では山田五十鈴さんが演じていらっしゃったんです。私も、南座でそんな役を演じられる年になったとは、感慨深いものがありますね」5月31日(日)から東京・花巻・山形で行われる還暦コンサートでは、「これまで私を支えてくださったスタッフやお客さまに、心からの〝ありがとう〞の気持ちを込めて、歌いたいと思っています」。文:あさかよしこ、撮影:桂伸也初演は山田五十鈴さん古風な美人を演じます1955年、山形県生まれ。女優・劇作家・演出家として活躍、岸田戯曲賞、紀伊国屋演劇賞個人賞など多数受賞。7月7日(火)~23日(木)、京都南座で「喜劇 有頂天旅館」に出演。一等席1万1000円ほか。チケットの問い合わせは0570-000-489、チケットホン松竹へPROFILE ─300(さんじゅうまる)」を主宰。劇団解散後も「渡辺塾」を開き、俳優志望の若者たちの指導にあたっています。「昔から、芝居をやる若者は貧乏でしたけど、今はもっと貧乏です。でも、彼らに言うんですよ。『夢を実現させるためには、とにかく真剣に、死ぬ気でやってくれ!』って」これは、次世代へ寄せる期待であり、同時に経験と年齢を重ね、さらに輝くための、渡辺さん自身へのエールなのかもしれません。
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