リビング京都 西南版 2017年8月26日号
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(10)2017年8月26日(土曜日)西南第1815号 高齢者が発症しやすいイメージの逆流性食道炎。数年前から若い世代の人も増えているそうです。製鉄記念広畑病院の内視鏡センター長・前田晃作医師にどのような病気なのかを聞きました。 口から入れた食物を胃に送るための管、食道は通常一方通行。しかし何らかの原因で胃酸が逆流し、食道の粘膜が胃酸にさらされて炎症を起こすことを「逆流性食道炎」といいます。胃には酸から粘膜を防御する機能が働いていますが、食道には防御機能がありません。胃酸の逆流が繰り返し起こると、食道の粘膜がただれたり潰瘍(かいよう)が生じたりしてしまいます。 逆流する主な原因は、食道と胃の間を閉じている下部食道括約筋という筋肉の衰え。年齢を重ねるにつれてこの筋肉が弱まって、食道と胃の間が開いてしまい、胃酸が逆流しやすくなります。たばこに含まれるニコチンやアルコールを摂取したときも筋肉が緩み、逆流する可能性があります。加齢や腹圧の上昇などによって胃が食道側に飛び出す食道裂孔(れっこう)ヘルニアも原因の一つです。 また食べるスピードが速かったり、一度に大量の食物を食べたりすると、消化を促すために胃酸を大量に作ろうとするので、酸が増加して逆流してし胃 液横隔膜下部食道括約筋横隔膜食 道呑 酸胸やけ胃もたれ胃酸にさらされてただれるか潰瘍が生じる胃酸の逆流逆流性食道炎はどのような病気?Q1 逆流性食道炎の症状は、主に胸やけ、のどの周辺、口の中が酸っぱく感じる呑酸(どんさん)、不眠、食欲不振、胸のあたりが締め付けられるような痛みなど。「症状は人によって異なりますが、一日中続いて不快感がなくならないときは疑ってみましょう」と前田医師。 重度になると咳(せき)がひどくなってぜんそくにつながることもあります。下のチェックシートで、逆流性食道炎ではないか確認してみましょう。前田医師は「一つでもチェックが付いたら、専門医に相談を」と呼びかけます。兆候と考えられる症状は?Q2前田晃作医師製鉄記念広畑病院内視鏡センター長(逆流性食道炎の仕組み)胸やけの症状がある1胸やけや呑酸のため、よく眠れなかった3胸やけや呑酸のため、医者から指示された以外の薬(市販薬など)を服用した4のどの違和感(イガイガ感、ヒリヒリなど)6胃もたれ(重苦しい)7よくせき込む胃の痛み5呑酸の症状がある頻繁にげっぷが出る※❶はチェック日からさかのぼって1週間の間に、症状や状態を何日感じたか医師に伝えましょう1症状チェックシートおなかの張り2まうケースも。そして、人の胃の粘膜に生息している細菌のピロリ菌の働きにも関係があります。一般的に胃がんになりやすいことから除菌をすすめる医師が多いですが、ピロリ菌は酸の発生を抑える作用があるといわれています。食道 逆流性食道炎かも、と思ったときに今すぐできる予防方法を紹介。誰もが発症するかもしれない病気だからこそ、正しい知識を身に付けましょう。 「胸のあたりが締め付けられるように痛い、違和感があるなどの症状が出たとき、心臓の病気を疑って初めは循環器内科を受診する人が多いです」と前田医師。「逆流性食道炎の場合は循環器内科で検査しても異常は見られません。もしかしたら…と思ったら、まずは内視鏡検査で食道の粘膜の状態を調べましょう」と話します。食道の炎症がひどくても症状が出ない人もいれば、小さい炎症でも症状を強く感じる人もいるなど個人差があります。内視鏡検査をすればすぐに判定でき、早期発見・早期治療が期待できるといいます。 食道がんなどの大きな病気につながることはまれですが、一度発症すると完治するのは難しいとのこと。プロトンポンプ阻害薬(PPI)と呼ばれる薬を服用し、胃酸の分泌を抑えて食道への逆流による傷害を防ぎ、食道の炎症と自覚症状を消失させるのが一般的な治療です。「不快感に悩まされ続けるのではなく、しっかりと検査をして原因をつきとめ、治療すれば症状を抑えることができます。自分で判断してしまうのではなく、まずはかかりつけの医院やクリニックに相談してください」。「これくらいならまだ大丈夫だろう」と考えがちの人は、加齢とともに体も変化することを再認識して「体の変化は何かのサインかも」と意識を切り替えることが大切です。Q3逆流性食道炎かもと  思ったら内視鏡検査を 一番の予防方法は生活習慣を見直すこと。できるだけ胃に負担をかけないようにすると、逆流性食道炎の予防に効果的です。禁酒や禁煙をすぐに実践するのが難しいなら、少しずつでも減らす努力を。健康に暮らすために、次のようなことに気をつけましょう。Q4今すぐできる予防方法食生活の見直し(よくかむ、一度にたくさん食べない、食べ過ぎず腹八分目に。食後にすぐ寝転ばない)喫煙しない(ニコチンを摂取しない)過度にアルコールや炭酸をとらない眠るときは腹部から上を高くするおなかを締め付けないようにする前かがみの姿勢を避け、背筋を伸ばす胃 酸横隔膜横隔膜下部食道括約筋(一般的な治療法)胃酸逆流による傷害を抑制薬で胃酸の分泌を抑制一つでもチェックが 付いたら相談を!

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